日本国内の鉄フライパン『ガス軟窒化処理』の歴史と内容

鉄鋼板は、同じ厚さの銅やアルミに比べ、「熱容量が大きい」、「丈夫」、「放熱特性が多くの食材に適している」といった理由で、昔から「フライパン」や「中華鍋」に使われてきました。

しかし、手入れを怠ると錆びやすいということもあり、一時はプロの料理人が使う調理道具素材と思われてしまうような時期もありました。

そこで、鉄鋼板を使用してフライパンや中華鍋を製造している弊社のようなメーカーは(と言っても当時はほんの2~3社でしたが)、鉄鋼板を錆びにくくする方法に挑戦することとなりました。

行き着いた結果が、金属熱処理技術「窒化処理+酸化処理」です。

この「窒化処理」は、大きく分けて、二つの道に分かれます。

一つは、弊社が採用している「ガス軟窒化処理」と呼ばれる熱処理技術です。

今一つは、「塩浴窒化処理」と呼ばれる熱処理技術です。

様々検討した結果、弊社は、「ガス軟窒化処理」を採用致しました。


次は、何時頃から日本国内で鉄鋼板製フライパン等に、このガス軟窒化処理が行われるようになったかについて、お伝えします。

車に詳しい方はご存知かと思いますが、「ルーカス」という会社が、「ガス軟窒化処理+酸化処理+エマルジョン液冷却」という特許を持っていました(ナイトロテックという名称ですが、今は特許権が切れています)。

この技術を使って、1991年に大阪のフライパンメーカーと熱処理企業が「ガス軟窒化処理鉄鋼板製フライパン」を製造し、大々的に販売を開始しました。

しかし残念なことに、このフライパンメーカーは、既に廃業されています。

実はこれ以前に、このフライパンメーカーの代表者が、日本国内で「ガス軟窒化処理+酸化処理」による鉄鋼板製フライパンの製造特許を、熱処理企業の方と連名で取得しています。

もちろん、この特許も占有できる期限が過ぎ、今ではどなたでも使用できます。

特許庁がネット上で公開している「金属熱処理」の膨大な資料を見ると、基本技術は「ガス軟窒化処理+酸化処理」であっても、それに様々な工夫を加えられた多くの特許があります。

以上でお分かりのように、鉄鋼板フライパンに施す「ガス軟窒化処理+酸化処理」技術自体は、今では、どのフライパンメーカーでも使用できる「ベーシックな金属熱処理技術」です。

最後になりますが、弊社は2006年(平成18年)8月22日に「ガス軟窒化処理+酸化処理」を行った窒化フライパンシリーズを初出荷し、9月1日より全国店舗で販売を開始しております。

なお、この時期を遡ること数年前から試作を開始し、改良を重ね、発売に至っております。